キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下で一方的に総主教代理区の地位を廃止(2018年11月)された西欧ロシア正教会大主教区のジャン大主教座下がロシア正教会モスクワ総主教庁への移動を決定(2019年9月)

 2019年9月14日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの管轄権下にあったものの2018年11月にコンスタンティノープルから一方的に総主教代理区としては廃止され、大主教区という集団としても解体をされそうな西欧ロシア正教会大主教区の首座ハリオポリス大主教ジャン座下(イオアン大主教 : His Eminence Archbishop JohnJean】【Ioan】【Ioann】 of Chariopoulis)は声明を発表しました。

 内容は、自身及び大主教区の教会法上の管轄をロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下に移すことと、明日(9月15日)より、自身が属する教会の首座の名前としてキリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)の名を挙げて礼拝をおこなうとしています。

 ロシア正教会モスクワ総主教庁の聖シノドは、ジャン大主教からの要請を受け入れ、ジャン大主教および大主教と共に来る人々を歓迎するとともに、ジャン大主教にドゥブナ大主教(Archbishop of Dubna)の称号を用意したようです(ハリオポリス大主教はコンスタンティノープルの称号のため)。

 同大主教区は9月7日の臨時総会で必要な三分の二の賛成が得られず(賛成は六割弱)、今後どうするかというところでしたが、ジャン大主教は自分についてくるものだけでモスクワ総主教庁に移動することを決定したようです。以降、モスクワ総主教庁の管轄権下で自治的な権限を持つ大主教区となります。

 

 (英語)Abp. John moves Archdiocese of Russian Churches in Western Europe into Moscow Patriarchate / OrthoChristian.Com
 (英語)Interfax-Religion: Head of “Russian exarchate” of Constantinople joins Russian Orthodox Church
 (英語)Interfax-Religion: The Russian Church about return of “Russian exarchate” parishes under its jurisdiction: a long way is almost accomplished
 (英語)Former Head Of European Orthodox Archdiocese Joins Russian Orthodox Church – UrduPoint

 (英語)Archbishop John (Renneto) and parishes following him admitted to ROC – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Archbishop John (Renneto) addresses his flock – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Patriarch Kirill and Archbishop John have a telephone talk – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 (英語)Orthodox schism: Priests in Western Europe reject Constantinople, side with Moscow — RT World News

 (フランス語ほか:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Communiqué du Bureau de l’Archevêque du 14 septembre 2019
 (フランス語:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Communiqué du Bureau de l’Archevêque du 14 septembre 2019
※まだサイト上表記はコンスタンティノープル管轄権下を示すものが残っています。

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)The Russian Orthodox Church Holy Synod integrates the head of the Archdiocese of the Western European Parishes of Russian tradition as well as clergy and parishes who wish to follow him | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Holy Synod session minutes of September 14, 2019 | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Patriarch Kirill had a phone talk with Archbishop Ioann of Dubna | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)The Russian Orthodox Church Holy Synod integrates the head of the Archdiocese of the Western European Parishes of Russian Tradition as well as clergy and parishes who wish to follow him / News / Patriarchate.ru
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Patriarch Kirill had a phone talk with Archbishop Ioann of Dubna / News / Patriarchate.ru

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)ЖУРНАЛ Священного Синода от 14 сентября 2019 года / Официальные документы / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Священный Синод принял в состав Русской Православной Церкви главу Архиепископии западноевропейских приходов русской традиции, а также клириков и приходы, которые желают последовать за ним / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Состоялся телефонный разговор Святейшего Патриарха Кирилла и архиепископа Дубнинского Иоанна / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Священный Синод принял в состав Русской Православной Церкви главу Архиепископии западноевропейских приходов русской традиции, а также клириков и приходы, которые желают последовать за ним | Русская Православная Церковь
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Состоялся телефонный разговор Святейшего Патриарха Кирилла и архиепископа Дубнинского Иоанна | Русская Православная Церковь

 (ロシア語:ベラルーシ正教会公式サイト)Журнал Священного Синода от 14 сентября 2019 года | Православие в мире | Новости | Официальный портал Белорусской Православной Церкви

 

 これまでジャン大主教派、大主教区の総会などの組織やルール、それに世俗的な法と教会法は別として来ましたが(それは理屈上はそうです)、今回の決定については教会法上のものであるとして、引き続き大主教区の総会などのルールは有効であるとしています。
 仮にモスクワ総主教庁の管轄権下に入らなくても、引き続き大主教区のルールでは共に行動することが可能と強弁できなくもないですが、さすがに……。
 グレートブリテン・アイルランド司祭長区(Deanery of Great Britain and Ireland)をはじめ、モスクワ総主教庁への移動に反対の票を投じた 41 %の人々(を代表とする人々)が大主教区より離脱を表明する可能性は極めて高いでしょう。ただ、彼らが「ではどうするか」というと、コンスタンティノープルの管轄権下でバラバラになるのを選ぶのか、ある程度のまとまりを作って教会法上合法な教会から離脱するのか、それはわかりません。

 

追記:
 ギリシャの正教会メディア Romfea もニュース記事を出しています。
 コンスタンティノープルを見限る者が出て、それをロシア正教会が受け入れるということが、ギリシャ人にとってどれだけの衝撃があるのかはまだ判断できませんが……。

 (ギリシャ語)ΕΚΤΑΚΤΟ: Δεκτός από το Πατριαρχείο Μόσχας ο Χαριουπόλεως Ιωάννης

Romfea.grさんはTwitterを使っています: 「ΕΚΤΑΚΤΟ: Δεκτός από το Πατριαρχείο Μόσχας ο Χαριουπόλεως Ιωάννης https://t.co/So8BV67FKR」 / Twitter

Praktoreio Ekklisiastikon… – Praktoreio Ekklisiastikon Eidiseon | Facebook

 

追記2:
 反ジャン大主教派なのかなんなのかよくわかりませんが(公式サイトを共有しているので)、大主教区のルールを守ろうとする人々が声明を出しています。
追記2の追記:
 下記のページは閲覧できなくなりました
 内部の争いがあることがはっきりしましたが、閲覧できなくなったということは、ジャン大主教側が勝利を収めたということになるのか、もう少し情勢を見守りたいと思います。
 ただ、もしかしたらイタズラの類だった可能性もあります。
追記2の追記2:
 キリスト教/コンスタンティノープルよりロシア正教会に移動(帰還)した西欧ロシア正教会大主教区のジャン大主教座下が、“反ジャン大主教派”に関して声明(2019年9月)

 (フランス語:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – COMMUNIQUÉ D’UNE PARTIE DES MEMBRES DU CONSEIL DE L’ARCHEVÊCHÉ DU 14 SEPTEMBRE 2019

 この人々がなんなのか(どういう権限があるのか)いまいちよくわかりませんが、公式サイトで声明を出せるからには、管理的な権限はしっかり握っているのでしょう(反ジャン大主教ならばなぜジャン大主教の声明を掲載させたのかは疑問ですが……)。

 声明のポイントは二つで、一つは(フランス国内のメンバーに)ジャン大主教についていくか、コンスタンティノープルのエマニュエル府主教の教区内に吸収されるのを選ぶか、ルーマニア正教会の府主教の教区内に吸収されるのを選ぶか選択してその移動先と大主教区にそれぞれ連絡してねということです。ここでジャン大主教の gmail のアドレスがわざわざ掲載されていることから、この人々は以降ジャン大主教を大主教区から排除というかもう関係ない人として扱うつもりなのかもしれません。

 二つ目は、大主教区の首座はコンスタンティノープルからでないとダメだというようなルールが大主教区にあったらしく(はじめて知りました)、モスクワ総主教庁に移ったジャン大主教はもはやその任務にあたれないとしています(よって彼らの見解によればもう首座ではありません)。
 そのため、コンスタンティノープルに首座代行の指名を求めたそうです。
 唖然……。
 コンスタンティノープルは大主教区は(もう)存在しないといっているのに、存在しないものの首座代行の指名を求めてどうするのか……。
 もちろんシスマ2018からのコンスタンティノープルの行動はルールもクソもないので、存在しない団体の首座代行を指名するくらい平気でするかもしれないですが(モスクワへの嫌がらせのためだけに!)、この状況にいたってまでコンスタンティノープルにすがりつくしかないこの人たちはなんなんでしょうね。そんなにコンスタンティノープルに従いたいなら、コンスタンティノープルは大主教区を解散して分割して吸収するといったんだからそれに従えばいいでしょうコンスタンティノープルのいっていることを真面目に聴いているのですか?
 ごちゃ混ぜのデタラメな教会の末路はこんなものか……。
 ですが東方正教会全体の未来がこれよりマシだという保証はまったくありません。というか規模が大きくなる分、もっとアホらしいものを我々は見ることになるでしょう。

 

 シスマ2018以降、コンスタンティノープルとギリシャ人のいい加減ぶりさはひどいものがありますが(所詮バルバロイはどうでもいいのでしょう)、この大主教区のコンスタンティノープルにしがみつく人々もひどさでは引けを取りません。コンスタンティノープルのいうことを無視しつつコンスタンティノープルは絶対だというような行動を取るのは理解に苦しむところです。あいまいな供述をしつつコンスタンティノープルにまとわりついているので、ストーカー防止法のような法律でコンスタンティノープルから訴訟を起こされるのではないでしょうか。

 

 なお、そんなことはどうでもよくて、重要なのは聖堂や修道院や預金などの教会財産を誰が抑えているかということになるかと思います。
 主流の教会から離脱した人々が嘲笑交じりに指摘するように、争いが起きると最後は金を争うのが東方正教会の教会法上合法な教会です。

 

追記3:
 ロシアの Interfax によりますと、9月15日に、パリのアレクサンドル・ネフスキー大聖堂で、モスクワ総主教庁の管轄権下に移ってから初めての礼拝がおこなわれたようです。
 
 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Прихожане "русского экзархата" в Париже с восторгом встретили весть о присоединении к РПЦ
 (英語)Interfax-Religion: Parishioners of the “Russian exarchate” in Paris enthusiastic about joining the Russian Orthodox Church
 (英語)Faithful fill church for Abp. John’s first Liturgy as hierarch of the Russian Church / OrthoChristian.Com

 

追記4:
 公式サイトで礼拝がおこなわれたという記事が出ました。

  (フランス語:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Dimanche historique et festif à la Cathédrale Saint Alexandre Nevsky

 

キリスト教/ギリシャ正教会首座アテネ大主教イエロニモス2世座下が、ロシア正教会の西欧における総主教代理アントニー府主教座下と会見(2019年9月)

 2019年9月6日、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)は、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の西欧における総主教代理/コールスニ・西欧府主教アントニー座下(His Eminence Metropolitan Anthony【Antoniy】 of Korsun and Western Europe, Patriarchal Exarch of Western Europe)と会見しました。
 アントニー総主教代理座下側から、ロシア正教会の海外の教区らの活動についてイエロニモス2世座下側へ説明があり、また、東方正教会内の問題についても話し合われたようです。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Metropolitan Anthony of Chersonesus and Western Europe meets with Primate of Greek Orthodox Church | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Metropolitan Anthony of Chersonesus and Western Europe meets with Primate of Greek Orthodox Church / News / Patriarchate.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Митрополит Корсунский и Западноевропейский Антоний встретился с Предстоятелем Элладской Православной Церкви | Русская Православная Церковь
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Митрополит Корсунский и Западноевропейский Антоний встретился с Предстоятелем Элладской Православной Церкви / Новости / Патриархия.ru

 

 (英語)Metropolitan of Chersonese met with the Archbishop of Athens – Romfea News

Romfea.newsさんはTwitterを使っています: 「The Archbishop and Metropolitan Anthony raised a number of issues on Orthodoxy . #romfeanews https://t.co/hthqUxkW1L」 / Twitter

Romfea.news – The Archbishop and Metropolitan Anthony… | Facebook

 

キリスト教/ロシア正教会の「西欧における総主教代理」が交代(2019年5月)昨年末【2018年12月】に再設置

 2019年5月30日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の聖シノドは、同教会のウィーン・ブダペスト大主教アントニー座下(His Eminence Archbishop Anthony【Antoniy】 of Vienna and Budapest)を新たな「西欧における総主教代理」に、昨年末【2018年12月】の再設置より「西欧における総主教代理」を務めていたイオアン府主教座下をウィーン・ブダペスト府主教にするという、交代人事を決定しました。
 翌5月31日に、アントニー座下は府主教に昇叙されています。

 

 (英語)New Exarch of Western Europe of the Patriarchate of Moscow – Romfea News

Romfea.newsさんのツイート: "New Exarch of Western Europe of the @mospat_ru #romfeanews https://t.co/gTHgG3Ve8e"

 

 昨年末にロシア正教会は、対コンスタンティノープルの意思表示として、「西欧における総主教代理区」と「東南アジアにおける総主教代理区」を設置しました。
 このうち、「西欧における総主教代理」に叙任されたイオアン座下は、主教から(大主教を経ずして)府主教に昇叙されるという、例外的な事態となっていました。

 今回、ギリシャの正教会系メディア Romfea 英語版は、この短期間での交代を「予想されていなかったもの」としています。
 しかし、上記のように、イオアン座下を総主教代理とした昨年の人事が例外的なものだったことを考えると、いずれイオアン座下は“本来の昇格路線”に戻し、別の人物が総主教代理となる予定だったとみるべきでしょう。

 アントニー座下のほうは、今回の総主教代理叙任とともに、府主教に昇叙されました。
 また、アントニー座下は、以前より(モスクワ総主教庁のロシア連邦外の教会に関する役職に就いているため)コンスタンティノープル管轄権下にある西欧ロシア正教会大主教区のロシア正教会“移籍”に関して、ロシア正教会側の窓口となっています。
 今回、アントニー座下を「西欧における総主教代理」に移したのは、大主教区の件と関係があるかどうかはわかりませんが、仮に交渉が破綻した場合、ロシア正教会側は個別に切り崩して「西欧における総主教代理区」に入れるように行動するでしょう。アントニー座下はこれから大主教区メンバーとの接触もますます増えるだろうことを考えると、切り崩しの前準備のようにも思えますが……。

 

キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下で一方的に総主教代理区の地位を廃止(2018年11月)された西欧ロシア正教会大主教区。ロシア正教会に“移籍”した場合に関するモスクワ側の提案はこれ以上譲歩の可能性はなさそうな内容だが快諾はない模様(2019年5月)「なにもしない」ことになるのでは

 キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの管轄権下にあったものの2018年11月にコンスタンティノープルから一方的に総主教代理区としては廃止され、大主教区という集団としても解体されそうな、西欧ロシア正教会大主教区ですが、ロシア正教会に“移籍”した場合に関するモスクワ総主教庁側の回答内容や、聖職者らのコメントなどが散見されます。

 モスクワ総主教庁側の回答内容で目立つのは、“移籍”が成立すれば、同大主教区に(補佐的な職務をおこなう)主教を二名叙聖する用意があるという項目です。
 ジャン大主教座下は、自らが高齢なのにコンスタンティノープルが後継候補の主教を叙聖しようとしないことについて、主教不在による大主教区の消滅を狙ったものだとコメントしていました。
 二名の主教が追加されることにより、(ジャン大主教座下に万が一のことがあっても二名の主教が残っているので)東方の教会の伝統(新たな主教はすでに主教となっているもの二名によって叙聖される)を守ることが可能になります。
※余談ですが、この「自然消滅を狙って新規の主教叙聖をおこなわない」というのは、キリスト教/英国正教会【イギリス正教会】がキリスト教/オリエント正教会/コプト正教会より離脱(2015年10月)したときにも観測(コプト正教会は英国正教会の自然消滅)としてあったものです。素性の違う連中が寄り集まっている自治的な集団を解消しようという発想はどこにでもあるということでしょうか。

 また、大主教区そのものについては、ロシア正教会の西欧における総主教代理区に属するものではないとも明言された模様。
 自治的な内容については、詳細ははっきりしませんが……。

 これらの内容からすれば、ロシア正教会側の提案は、これ以上の譲歩の可能性はほぼない(詳細がはっきりしない自治的な内容に関してはともかく)ものですが、大主教区側はこの内容について積極的に受け入れようとする空気は、そこまで広がっていないようにみえます。
 この原因ですが、いろいろ理屈はいってますが、結局のところ、彼らのいう「教会法上合法」というのが、コンスタンティノープルまたはコンスタンティノープルとフル・コミュニオンの状態にある教会に属することであるため、コンスタンティノープルの指示に逆らって行動を起こすということがおかしいということにあるのでないかと思います。
 ロシア正教会側は、この大主教区を受け入れる(自らに戻す)ことは悲願で、達成したいはずですが、一方、現在出している条件ではいつまたコンスタンティノープル側に裏切るかわからない連中が裏切るのを止める方法がないわけで、ここまで出したならここが限界でしょう。本音を言えば、教会財産をすべてモスクワに戻して、大主教区をつぶしたいはずです。
 また、大主教区側には、21世紀に入ってから“裏切った”人々が含まれており、彼らの教会財産や聖職者の地位に対しては、どれだけ保証されるかはわかりません。というか、たぶん財産をすべてモスクワが接収して、聖職者は僻地の修道院かどこかに押し込めると思います(こうなるかはわかりませんが、報復処置がおこなわれそうなほのめかしはあるようです)。

 いずれにせよ、この条件で受け入れられないならば、可能性はもうないわけで、9月7日に臨時総会としたのも、その頃までになにか奇跡が起こってすべてうまくいくといいねみたいななげやりな日程設定だったのでしょう。

 それにしても、あきれるのは、「コンスタンティノープルとモスクワの争いの被害者にはなりたくない!」という発言で、まるで彼らが両者の争いに無関係であるかのような責任感のなさ。
 21世紀にもなって、モスクワから離脱した人々を受け入れた大主教区の連中がなにをいうか、とあぜんとしました。
 あなた方の存在そのものがコンスタンティノープルとモスクワの争いであり、ウクライナ問題の前哨戦です。

 

インタビュー記事(ロシア語):キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下からの事実上の離脱を決めた西欧ロシア正教会大主教区のジャン【イオアン】大主教座下「理想的な教会は無い。ローマ・カトリック教会の現状を見るがいい」(2019年2月)

 2019年2月23日に臨時総会【EGA】がおこなわれ、事実上、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルからの離脱を決定した西欧ロシア正教会大主教区。

 この大主教区は、もともとロシア帝国崩壊後のソ連での弾圧から逃れた人々らにより結成され、その後ロシア正教会モスクワ総主教庁を完全に離れてコンスタンティノープルの管轄権下に入っていたものです(ものすごく簡単にいいましたが)。
 1999年には、コンスタンティノープルより総主教代理区として認めるトモスを与えられましたが、2018年11月27日にコンスタンティノープルより突如として一方的に廃止を宣告されました。また、これは大主教区自体の廃止を要求するものでした。
 一方、大主教区側は、これに対し、総主教代理区として認めるかどうかはコンスタンティノープルが決めるものだが、大主教区の将来を決めるのは大主教区自体の総会【GA : General Assembly】であるとし、2019年2月23日、臨時総会【EGA : Extraordinary General Assembly】を開催、コンスタンティノープルからの要求を拒否することを投票で決定しています。
関連:
 キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止された西欧ロシア正教会大主教区の臨時総会が開催、集団としての解体を認めないと決定(2019年2月)

 また、これから大主教区が、コンスタンティノープルではないどこの教会法上合法な教会に属するかですが、ロシア正教会モスクワ総主教庁、(ロシア正教会の管轄権下で自治的な権限を保有する)在外ロシア正教会、ルーマニア正教会、アメリカ正教会【OCA】の名前が挙がっていました。

  Orthodoxie.com によりますと、投票でコンスタンティノープルの要求の拒否が決まった後、同大主教区のジャン大主教座下(イオアン大主教 : ハリオポリス大主教)は、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会のウィーン・ブダペスト大主教アントニー座下(His Eminence Archbishop Anthony【Antoniy】 of Vienna and Budapest)からの書簡を読み上げ、すでにロシア正教会モスクワ総主教庁との間の対話が進んでいることをあきらかにしています。
関連:
 キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止され、事実上の離脱を決定した西欧ロシア正教会大主教区は、すでにロシア正教会モスクワ総主教庁との話を進めている模様(2019年2月)

 今回、さらに別のメディアがジャン座下へのインタビューをおこなっています。

 (ロシア語)Парижский архиепископ о перспективе перехода к РПЦ: «Идеальных церквей нет» – РОССИЯ – RFI

 今までの状況の確認ですが、興味深いものになっています。

 新しく属する教会として連絡を取った先として(ロシア正教会以外)、在外ロシア正教会とルーマニア正教会へも連絡を取ったことがあきらかにされていますが、在外ロシア正教会では大主教区側の要求が通りにくそうなこと、ルーマニア正教会ははっきりしないようです。アメリカ正教会【OCA】については言及がありません。
※なお、ルーマニア正教会が前向きに検討しているとする報道もありますが……。

 また、現在の政治情勢のもとで、ロシア正教会の管轄権下に入ることについては、「政治とは距離を置くこと」という状況によっては厳しいもののよくある聖職者的なコメントに加え、ロシアの聖堂や修道院が復興していることに心動かされている様子がうかがわれます。
 加えて、離脱者が出る可能性についても認めています。西欧は自由な国々なので立ち去るのも自由ということですが……これは東方正教会の聖職者として果たして良いのかとも思われます。
 しかし、次のようなコメントも面白いところです。
「スキャンダルなどの問題はすべて教会にある。ローマ・カトリック教会の現状を見よ(このインタビューより時間としては後ですが、本日、オーストラリアの枢機卿が複数の児童への性的虐待で有罪宣告)」
「私はいつも楽園はここにはないと言っている。修道院も楽園ではない。地上には天国はない」
「もし我々がもっとも理想的な教会を求めてもそんなものはない。無人島で一人で過ごすしかない」

 インタビューの中で質問されていながらはっきりと答えられていないように思うのは、大主教区が教会法上合法な教会の中にあるべきなのか(つまり「完全に独立した宗教組織になってはいけないの?」)ということと、現在の状況で東方正教会の教会法上合法な教会とはなにか(モスクワがコンスタンティノープルとのフル・コミュニオンを解除している現状で、コンスタンティノープルがモスクワとのフル・コミュニオンを解除する可能性はあるわけですが、そうなってもモスクワは教会法上合法な教会なのか)というあたりでしょうか。