キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁が、ウクライナの独立正教会設置に向けてキエフにおける総主教代理を二名任命。ロシア正教会系のウクライナ正教会は激しく反発(2018年9月)

2018年~ ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立関連の記事一覧

 

 2018年9月7日、キリスト教/東方正教会/全地総主教庁は、ウクライナに独立正教会を設置する準備として、キエフにおける総主教代理(Exarchs in Kiev)として二名を叙任したと発表しました。

 

 (英語:全地総主教庁公式サイト)Ecumenical Patriarchate | Announcement of the Ecumenical Patriarchate (7th Sep. 2018)
 (英語:コンスタンティノープル全地総主教庁 世界教会協議会代表部 公式サイト)Ecumenical Patriarchate sends Legates to Ukraine – Ecumenical Patriarchate Permanent Delegation to the World Council of Churches

 (ウクライナ語:ウクライナ正教会公式サイト)Заява ВЗЦЗ УПЦ у зв’язку з призначенням Константинопольським Патріархатом екзархів у Київ – Українська Православна Церква
 (ウクライナ語:ウクライナ正教会公式サイト)Призначення екзархів поки що не означає створення в Україні нової церковної структури — коментар прот. Миколая Данилевича – Українська Православна Церква

 

Announcement Within the framework of… – Ecumenical Patriarchate | Facebook

 

 キエフにおける総主教代理に叙任されたのは、いずれも全地総主教庁下の、
 アメリカ合衆国ウクライナ正教会(Ukrainian Orthodox Church of the USA)のパンフィロン大主教ダニエル座下(His Eminence Archbishop Daniel, Archbishop of Pamphilon)、
 カナダ・ウクライナ正教会(Ukrainian Orthodox Church of Canada)のエドモントン・西部教区主教イラリオン座下(His Grace, the Right Reverend Bishop Ilarion, Bishop of Edmonton and the Western Eparchy)、
 です。

 これに対し、ロシア正教会モスクワ総主教庁下で自治的な権限を持つウクライナ正教会は激しく反発しています。

 

 ロシア正教会モスクワ総主教庁からの正式な(聖シノドや総主教による)発表はありませんが、すでに批判的なコメントが掲載されています。
 少し前のロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下と全地総主教バルソロメオス聖下の主にウクライナの問題についての会談はいったいなんだったのかと思ってしまいますが、「話したけどダメでした」という、言い訳づくりのようなものだったのでしょうか。

 

 ここからの展開ですが、まず確認しておかなければならないのは、仮に全地総主教庁によるウクライナへの独立正教会設置がおこなわれたとして、それがほかの分野にどんな影響があるのかということがあります。
 ドンバスの「親ロシア派」が降伏したりはしないでしょうし、ロシアがクリミアを「返還」することもないでしょう。
 そして、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会は、すでにウクライナ国内でロシアの手先として“攻撃”を受けている状況です。
 ポロシェンコ大統領の人気が回復するということも、(彼自身がどう信じているかはともかく)望み薄です。
 状況として、何かが変わるのかというと、何も変わらないのかもしれません。

 その上で一つずつ。

 まず、独立正教会として設置されるのは何か、ということが挙げられます。
 「独立」が念頭に置かれているのは、一般的に「キエフ総主教庁」と「ウクライナ独立正教会」(どちらも全地総主教庁から教会法上合法な教会と認められていない)ですが、そもそもこの二つが合同できるのかという問題があります。
 また、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会も合流しなければ意味がないとする考えがあります。
 とはいうものの、この三団体の合流は不可能であり、中には「三つの独立正教会を設置すればいい。問題は各教会をどのような序列にするかだが……」といった現実性のかけらも見られない考えを表明する方もいます。とはいえ前向きな方でも、単一の独立正教会設置は不可能と思っているともいえます。
追記:
 ギリシャ系の正教会メディア(および一般報道)は、「モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会が全地総主教庁に独立の承認を要請したので全地総主教庁が応じた」という“フェイクニュース”を出しています(当のウクライナ正教会は、今回の全地総主教庁の行動について「この先どのような悪いことが起こってもそれはすべてコンスタンティノープル全地総主教庁の責任だ」としています)。ギリシャ系メディアは、もしやウクライナ国内の正教会の状況を根本的に理解していなかったのでは……。この数ヶ月、彼らはいったい何を騒いでいたのか……。

 次に今回叙任された二人、といいますか、それぞれが属する全地総主教庁下の「アメリカ合衆国ウクライナ正教会」と「カナダ・ウクライナ正教会」ですが、「キエフ総主教庁」と過去に問題を抱えた教会もあります。
 またこの二教会は独立正教会がウクライナに設置された場合どうなるのか(新しい独立正教会が「うちの傘下によこせ」と言い出すかもしれない)という問題が浮上する可能性もあり、そもそも独立正教会設置へ向けてこの人選が良いものなのかもわかりません。

 そしてロシア正教会のほうですが、教会レベルでできることはあまりなく(批判をしたり正論を述べたりするくらい)、全地総主教庁が強行すれば止められないでしょう(他の各教会も)。
 しかし、それは教会レベルでの話であり、この問題はロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領の間の政治的駆け引きに浮上してくる可能性があります。
 エルドアン大統領は、というかトルコ共和国は、全地総主教庁のことは名乗りすら認めていない(「全地」ではなく「イスタンブールの総主教」)はずですが、ロシア側からなにか譲歩を引き出すために、この問題を利用できるだけ利用してくるかもしれません。

 最後にクリミアの管轄権があります。
 現在のモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会は、ロシア正教会の一部であるために、従来に引き続いてクリミアで活動をおこなうことに問題がありません。
 しかし、全地総主教庁によってウクライナに独立正教会が設置されたとして、彼らが(彼らは当然クリミアはウクライナの一部であり自身の管轄権の一部であると主張し)クリミアで活動しようとしても、ロシア連邦政府及び連邦構成主体クリミア共和国がその聖職者をクリミアへ入れるかどうか、また入れたとしても帰ってこれるかどうかは、わかりません。
 しかし間違いなく、新しい独立正教会はクリミアへ聖職者を派遣するでしょう。
 “国境”で追い返されれば問題になりませんが、中で捕縛されれば新たな国際的な問題へ飛び火していく可能性もあります。

 

続報:
 キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁がウクライナへの独立正教会設置のために総主教代理を任命したことについて、ロシア正教会聖シノドは「(バルソロメオス総主教は)事実上は一度も持ったことのない指揮権があると勝手な解釈をしている」「このような『反・教会法的行為』の全責任は彼個人とその支持者たちにある」と宣言(2018年9月)

 

キリスト教/ロシア正教会に属するエストニアの女子修道院を、エストニア大統領ケルスティ・カリユライド閣下が訪問。フィラレータ女子修道院長やエストニア府主教エフゲニー座下と会談(2018年9月)

 2018年9月5日、エストニア共和国大統領ケルスティ・カリユライド閣下(Her Excellency Ms Kersti Kaljulaid)は、同国にあるキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁直轄ピュフティツキー女子修道院を訪問しました。
 フィラレータ女子修道院長(Abbess Filareta【Philareta】)や、モスクワ総主教庁下で自治的な権限を保有するエストニア正教会(モスクワ総主教庁系)の首座/タリン・全エストニア府主教エフゲニー座下(His Eminence Yevgeniy, Metropolitan of Tallinn and All Estonia, Primate of the Estonian Orthodox Church of Moscow Patriarchate)と会談したようです。

 フィラレータ女子修道院長は、1968年3月20日生まれの50歳で、もともと生物学関係を学んでいたようですが、修道院に関わって惚れ込んで、修道女になったようです。2011年より女子修道院長。
 エフゲニー座下は、2018年4月19日のコルニリー座下の永眠後に選出・承認されています。

 

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Президент Эстонии посетила Пюхтицкий ставропигиальный монастырь / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:エストニア正教会(モスクワ総主教庁系)公式サイト)Президент Керсти Кальюлайд посетила Пюхтицкий Успенский женский монастырь. – Эстонская Православная Церковь Московского Патриархата
 (ロシア語:ピュフティツキー女子修道院公式サイト)Визит Президента Эстонской Республики госпожи Керсти Кальюлайд в Пюхтицкий Успенский ставропигиальный женский монастырь

 

 (ロシア語:フォトギャラリー・動画あり)Президент Керсти Кальюлайд завершила визит в Ида-Вирумаа посещением Пюхтицкого монастыря | Ида-Вирумаа | ERR

 

 (写真一覧)5 сентября 2018 года. Визит президента Эстонии Керсти Кальюлайд в Пюхтицу – Google フォト

 

キリスト教/セルビア正教会のブエノスアイレス・中南米主教にキリロ座下が着座(2018年9月)

 2018年9月2日(?)、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会のブエノスアイレス・南米主教にキリロ座下(His Grace Bishop Kirilo of Buenos Aires and South-Central America)が着座したようです。
 同教会重鎮のモンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)が臨席し、礼拝などがおこなわれました。
 同教会および東方正教会の各教会から主教らが臨席。

 

Телевизија Храм:
Устоличен Епископ буеносајрески и јужно-централноамерички Г.Кирило – YouTube

 

Острог Тв Студио:
Устоличење Епископа Кирила Бојовића у Буенос Аиресу, 2 9 2018 љ Г – YouTube

 

 (英語:セルビア正教会総主教庁公式サイト)The First Serbian Bishop of Buenos Aires and South-Central America Kiril (Bojovic) enthroned | Serbian Orthodox Church [Official web site]
 (セルビア語:セルビア正教会モンテネグロ府主教庁公式サイト)Устоличен Епископ буеносајрески и јужно-централноамерички Кирило (Бојовић) | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)
 (セルビア語:セルビア正教会モンテネグロ府主教庁公式サイト)ПРИСТУПНА БЕСЕДА НОВОУСТОЛИЧЕНОГ ЕПИСКОПА СПЦ ЗА БУЕНОС АЈРЕС ЈУЖНУ И ЦЕНТРАЛНУ АМЕРИКУ Г. КИРИЛА | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Representative of the Russian Orthodox Church attends enthronement of Bishop Kirill of Buenos Aires and South and Central America | The Russian Orthodox Church

 

アンフィロヒイェ座下のほかの聖職者:
 セルビア正教会/ドゥクリャ主教メトディイェ座下(His Grace Vicar Bishop Metodije of Dioclea)、

 ロシア正教会/アルゼンチン・南米府主教イグナティー座下(His Eminence Metropolitan Ignaty【Ignatiy】 of Argentina and South America)、
 アメリカ正教会【OCA】/メキシコシティー・メキシコ大主教アレホ座下(The Most Reverend Alejo, Archbishop of Mexico City and Mexico)、
 在外ロシア正教会【ROCOR】/カラカス・南米主教イオアン座下(His Grace Bishop John【Ioann】 of Caracas and South America)、
 コンスタンティノープル全地総主教庁/パタラ主教イオシフ座下(Bishop Joseph【Iosíf】 of Patara)、

 

キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下が、フィンランド福音ルター派教会首座タピオ・ルオマ大監督と会見(2018年9月)

 2018年9月5日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)は、キリスト教/フィンランド福音ルター派教会首座監督/トウルク・フィンランド大監督タピオ・ルオマ座下(The Most Reverend Archbishop Tapio Luoma of Turku and Finland)と会見しました。

 両教会などからそれぞれ多数が同席しています。

 

russianchurch(ロシア正教会モスクワ総主教庁公式チャンネル):
Патриарх Кирилл встретился с делегацией Евангелическо-лютеранской церкви Финляндии – YouTube

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Patriarch Kirill meets with a delegation of the Evangelical Lutheran Church of Finland | The Russian Orthodox Church
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Святейший Патриарх Кирилл встретился с делегацией Евангелическо-лютеранской церкви Финляндии / Новости / Патриархия.ru

 (ロシア語:イングリア福音ルター派教会公式サイト)Встреча Архиепископа ЕЛЦФ и Епископа Церкви Ингрии с Патриархом Кириллом

ELCF Archbishop Dr. Tapio Luoma and… – Евангелическо-Лютеранская Церковь Ингрии на территории России | Facebook

 

追記途中:
 両首座以外に以下のような方々が出席していたようです。

ロシア正教会:

  • サンクトペテルブルク・ラドガ府主教ヴァルソノフィー座下(His Eminence Metropolitan Varsonofy of St. Petersburg and Ladoga)
  • モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))
  • モスクワ総主教庁事務局長ソルネチノゴルスク大主教セルギイ座下(His Eminence Archbishop Sergiy of Solnechnogorsk, head of the Moscow Patriarchate administrative secretariat)

フィンランド福音ルター派教会:

  • ミッケリ監督セッポ・ハッキネン座下(Seppo Häkkinen, Bishop of Mikkeli)

イングリア福音ルター派教会【Evangelical Lutheran Church of Ingria】:

  • アッリ・クガッピ首座監督(Bishop Dr. Arri Kugappi

※ロシア連邦国内にあるルター派の教会

 

キリスト教/エチオピア正教会のディオニシウス大主教座下が、コプト正教会のロンドン大主教【ロンドン大司教】アンゲロス座下を訪問(2018年9月)

 キリスト教/オリエント正教会/エチオピア正教会のディオニシウス大主教座下(Archbishop Dionissious)らが、キリスト教/オリエント正教会/コプト正教会/ロンドン大主教【ロンドン大司教】アンゲロス座下(His Eminence Archbishop Angaelos of London)を訪問しました。
 少し前に、エチオピア正教会は、本国エチオピアのシノドスとアメリカの亡命シノドスの和解が成立しました。今回の訪問はその挨拶まわりという意味合いもあるのかもしれません。
関連:
 キリスト教/亡命中のエチオピア正教会第4代総主教メルコリオス聖下と、本国の第6代総主教マティアス聖下の和解が成立。単一の教会が二人の総主教を戴く模様(2018年7月~8月)

 

Archbishop Angaelos نさんのツイート: "Pleased to welcome #Ethiopoan #Orthodox Archbishop Dionissious and his delegation to @CopticCentreUK today, and blessed to have them pray in @StGeorgeUK Cathedral. Expressed my sincere joy at recent #EOTC reconciliation. Looking forward to our ongoing collaboration in Britain.… https://t.co/iPvOibkNvh"

 名前・称号表記ですが、とりあえず、アンゲロス座下のほうのツイートに従いました。
 現在のエチオピア正教会の教区やシノドスの構成がよくわからないというのもあります。

 

EOTC (Orthodox Tewahedo) Channel:
በለንደን ከተማ በቅዱስ ጊዮርጊስ የቆጵጥስ ቤ/ክ የተደረገ ጉብኝት | Ethiopian Orthodox Archbishop and Coptic Archbishop – YouTube

 こちらのチャンネルは、アメリカを中心としたエチオピア正教会の映像をアップロードしていますが、どのような位置付け(もともとは、亡命側だったのか、本国側だったのか、とか)なのかよくわからないです。
 こちらでは、下記のような書き方をしています。

 His Grace Abune Dionysius, EOTC Pope of Europe Diocese

 まず、「His Grace」。現在の東方正教会では大主教(Archbishop)への敬称は「His Eminence」であることが多いですが、オリエント正教会では「His Grace」を見かけることも多いです。両方の表記を見かけた場合は、Eminenceで記述しています。
 「Abune」はエチオピアなどでは名前の前につける尊称。
 そのあとが名前ですが、アンゲロス座下のツイートとはスペルが違います(「Dionysius」「Dionissious」)。
 「EOTC Pope of Europe Diocese」は、 EOTCが「Ethiopian Orthodox Tewahedo Church」(エチオピア正教合性論教会)の略。 Popeは、もちろん教皇ではなく、エチオピア系メディアやエチオピア正教会情報サイトなどでは割とよくみる Primate(首座)の意味合いで Pope を用いている記述です。したがって同教会の欧州主教区(Europe Diocese)の首座であるということですが、敬称のこともあり、 Bishop なのか Archbishop なのかこれだけではわかりません(が、アンゲロス座下のツイートに Archbishop とあるのでそうなのでしょう)。