シスマ2018 (Spillover):キリスト教/ギリシャの東方正教会メディアΡΟΜΦΑΙΑ(Romfea.gr)が、モスクワのムフティー(イスラム教スンナ派指導者)の発言を伝える「ムスリム(イスラム教徒)はウクライナの情勢を憂慮している」「宗教は融和のためのもの」「教会分裂は良くない」(2018年10月)

 ギリシャの東方正教会系メディアΡΟΜΦΑΙΑ(Romfea.gr)が、モスクワのムフティー(イスラム教スンナ派指導者)の発言を伝えています。

 

 (ギリシャ語)Μουφτής Ρωσίας: ''Ανησυχούμε για την εκκλησιαστική κατάσταση στην Ουκρανία''

 

 記事によれば、モスクワのムフティー アリビール・クルガーノフ師(Albir Kurganov)が「ムスリム(イスラム教徒)はウクライナの情勢を憂慮している」「宗教は融和のためのもの」「教会分裂は良くない」という主旨の発言をしたということです。

 

 (ロシア語)Презентация доклада "Свобода совести и религиозная нетерпимость в современном мире" прошла в стенах пресс-центра «Россия сегодня» – Официальный сайт Духовного управления мусульман Москвы и Центрального региона "Московский Муфтият"

 

 公式サイトっぽいものを見つけたので読んでみたところ、主題は「信仰の自由」「テロの脅威」「ウクライナ問題」「欧州の反イスラムと反ユダヤ」「社会の世俗化と非伝統的な価値観の広がり」ですが、記事ではウクライナについてはおまけにひとことくらいの扱いでした。

 

関連:
 2018年~ ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立関連の記事一覧

 

【シスマ2018 – The Schism of 2018】<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など<東方正教会内戦、大分裂、そして崩壊?>

 新約聖書/マタイによる福音書/10章/34節 より:

わたしが地上に平和をもたらすために来たと考えるな。平和ではなく剣をもたらすために来たのだ。

 

※NHKなどによる雑な報道「ウクライナ正教会がロシア正教会から一方的に独立」などで、混乱している方も多いのですが、2018年10月12日時点で次のような状況です。
追記(2018年10月16日):
 10月15日にロシア正教会はコンスタンティノープルの全地総主教庁との関係を解除しました

  • 東方正教会の教会法上合法な教会はロシア正教会モスクワ総主教庁管轄権下で高度な自治的権限を持つウクライナ正教会で、同教会はコンスタンティノープルの全地総主教庁に独立の承認を要求していませんでしたし、今もしていません。なお同教会は、ロシア正教会系であるがゆえに、クリミア半島での活動がロシア側との衝突なしに可能です。
  • 独立正教会としての承認を要求していたのは、ウクライナ国内の教会法上合法でない教会(ウクライナの総主教と報道されているのはこっち)「ウクライナ正教会キエフ総主教庁」と「ウクライナ独立正教会」であり、コンスタンティノープルの全地総主教庁は、これらの教会に対して(今まではロシア正教会系のウクライナ正教会を認めていたのに)態度を変えて承認する方向に動いています。これに関してコンスタンティノープルの全地総主教庁は、ウクライナの管轄権を今まで手放したことはない(ので独立正教会を設置することに問題はない)、と主張しています。ロシア側は悪意のある歴史の書き換えだと主張。
  • 全地総主教庁の動きの原因にはウクライナのポロシェンコ政権や議会による訴えがありました(これについてはウクライナ憲法の政教分離原則に抵触しているという訴訟が提起されています)。またポロシェンコ大統領は「外国の宗教団体に自国の宗教団体が影響されることがあってはならない」という主旨のことを述べていますが、コンスタンティノープルの全地総主教庁はトルコ共和国の宗教団体です。いつからトルコはウクライナ領になったのですか?いやまあこれは意地悪ですので消しておきます。また、彼らのいう「ウクライナの管轄権」にはクリミア半島が含まれるため、新しく設置される教会の聖職者らが「当然の権利」としてクリミアで活動を始めようとするでしょうが、ロシア当局が認める可能性は低く(入国を認めるかどうかすらわかりません)、政治問題化するでしょう。
  • アメリカのバイデン前副大統領などがウクライナの政権と独立正教会設置を支援しており、宗教の問題を装った西側諸国の政治的・侵略的活動の一環だとロシア政府はみています。したがってロシア政府はそのような行動に対する対応をとる可能性があります。なお、バイデン前副大統領の生きているほうの子息が、ウクライナの企業の幹部(取締役?)の席についたという報道が数年前にありました。
  • 10月11日のコンスタンティノープル側の声明は、主にロシア正教会によって Anathema (簡単にいえば破門の重いほう)を受けていた教会法上合法でない人物(二つの教会の首座)への Anathema を撤回するということであり、独立承認に向けた継続する意思は示しているものの独立を承認したなどとは明言してはおらず「あなたたち要はなにをいってるの?」レベルの不鮮明さが含まれています。二人のうちキエフ総主教を称するフィラレート聖下のほうはロシア正教会に Anathema を受ける前は同教会の府主教だったので全地総主教庁による Anathema 撤回を有効とみれば府主教であり、主教以上に可能な神品機密をおこなうことは教会法上合法だと思われます。が、ウクライナ独立正教会の首座マカリー府主教座下はロシア正教会下で主教になっていないため、 Anathema を撤回してもそれだけでは主教ではなく、主教以上に可能な神品機密をおこなうことは教会法上合法ではないと思われます。二人の「キエフにおける総主教代理」がマカリー座下を主教に叙聖している可能性もありますが、そういった発表はなく、もし叙聖していないとすれば、ウクライナ独立正教会には教会法上合法な主教がいない可能性が高く、そうなれば新たに誰かを神品(=聖職者)として叙聖することはできません。となれば、ウクライナ独立正教会には教会法上合法な神品が存在しないため、通常の活動すら(教会法上合法な範囲では)できません。が、当然のことながら活動しているでしょう。もしそうなら全地総主教庁が教会法上合法ではない行為を容認しているわけで、もうムチャクチャな事態です(ウクライナ独立正教会は信徒数の割には今回の騒動では「脇役」扱いされているため(主役はキエフ総主教庁)、このあたりの正確な状況はわかりませんが、この程度のことはもはやどうでもよくなっているのかもしれません)。
  • 今後、ウクライナ政府は、ロシア正教会系のウクライナ正教会の教会財産の接収に動くことになります。すでに同教会へ攻撃を加えている、ナショナリスト、過激派らの行動がさらに過激さを増す可能性も極めて高い状況です。もはやウクライナはシリアより危険な場所になる可能性が出てきています
    • ウクライナへの渡航は自己責任で
    • ウクライナに関わらず、東方正教会関連の聖堂・修道院・歴史的な遺跡などに観光するのも自己責任で
  • なお、主にエストニアに不穏な状況が波及する可能性があります。エストニアでは1990年代に、今回のものより小規模ですが同様の争いがありました。2018年10月9日にロシア正教会系のエストニア正教会のトップがエストニア首相を訪問しています

 いくつかその後(10月12日以降)のことに追記しておきますと:

  • モルドバに問題が波及する可能性が出てきました。
    キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下のモルドバ訪問日程が4日→2日に短縮(2018年10月)ルーマニア正教会がコンスタンティノープルの全地総主教庁に同調しモルドバの管轄権を両者で分割するとも
    この話が本当だとすると、東方正教会信徒数第一のロシア正教会と第二のルーマニア正教会の断絶を意味します。
  • ギリシャ共和国とトルコ共和国間の、「エーゲ海の領海・領空問題」ですが、ギリシャ政府側が同国が主張する国際法に基づいた十二海里を要求するための強硬姿勢を打ち出しています(トルコ側は該当区域は国際法の例外としており、今回の動きはこれまでと同じ“ポピュリズム”であると批判……批判というか「どうせなにもできまい」とバカにしているというか)。また、トルコのエルドアン政権は以前より、ローザンヌ条約の改定を要求しており、どちらも事態が進めばコンスタンティノープルの全地総主教庁のトルコにおける立場をマイナスにするでしょう。
  • キエフ総主教フィラレート聖下は、今後の方針に関する協議を求めるウクライナ独立正教会の首座マカリー座下に対して、「協議の必要はない。こちらに合流せよ」という主旨の発言をした模様で(もともとの立場からするとフィラレート聖下からみればマカリー座下は下っ端もいいところ)、ウクライナ独立正教会側がどう対応するのかは不透明です(ウクライナ政府主導のため逆らうのは極めて難しいでしょうが、もともとなかなか合同できなかった二団体なので、短気な人たちが離脱して新教会を設立する可能性もあります)。キエフ総主教庁では、独立正教会となったときの首座の称号を使い分ける(国内では総主教、国外の独立正教会に対しては府主教または大主教)という議論を(ウクライナ独立正教会を無視して)しているようです(いきなり総主教ではどこも承認しないという判断でしょう)。他にすることはないのかと思うのですが、ないのでしょう
  • ギリシャ共和国の急進左翼連合【SYRIZA】ツィプラス政権は、教会と国家の分離を進めようとしています(憲法の改定が必要?)。いまいち内容の全貌がわかりませんが、その一部として、聖職者(ざっくりいうと司祭クラス)という名の公務員の人数が多すぎるのを減らそうとしているようです。ちなみに、この辺りに類似する話として、ローマ・カトリック教会では司祭の少数精鋭化が必要との意見が出ています。ともあれ、聖職者の数はともかくとして、ギリシャ共和国でギリシャ正教会の“特権”が失われることは、ギリシャ正教会のみならずコンスタンティノープルの全地総主教庁にとってもマイナスとなるでしょう。

 なお、そもそもの問題、「教会法上合法な教会」ですが、これは狭義では、「コンスタンティノープルの全地総主教庁及び、全地総主教庁に認められている13の独立正教会(それぞれの傘下の自治的権限を持つ教会を含む)」のことを指します。
 これだけ見ると、コンスタンティノープルの全地総主教庁がすべてを判断する場所のように思えますが、一方で、この地位は儀礼的なものであり、各独立正教会は同格、ともいわれます。
 問題が起きなければ別にどちらでもいいことなのですが、起きてみると、この二つは明らかに矛盾しています。

 また、「教会法上合法な教会」のみならず、それ以外の東方正教会系の「教会法上合法でない教会」を含めても、ロシア正教会の信徒が圧倒的に多いという現実があります(宗教人口の計測は難しいものですが、教会法上合法でない教会を含めても信徒数の半分以上がロシア国内のロシア正教会の信徒という結論が出せる調査もあります)。
 コンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会の間が完全に断絶した場合、コンスタンティノープルを正統とみると、信徒数が半分以下に減ります。それも、残りの全員がついている前提で、悪くすると、オリエント正教会系のエチオピア正教会単独より信徒数が少なくなる可能性もあります。
 そもそもトルコ当局はもとより「なにが『全地』だ! おまえは『イスタンブール総主教』だ!」と全地総主教の称号を認めていませんが、「全地」は無論のこと、コンスタンティノープルという名称自体を使用すること自体が敬意の表明でもあるので、今後のさらなる関係悪化にともない、ロシア正教会などが「イスタンブール総主教」「イスタンブール教会」などと呼称し始める可能性があります(トルコ当局の意見を尊重しただけですね)。

 

 そして、そもそもウクライナの人々は独立正教会など望んでおらず、独立正教会がどういう意味かもほとんど知らないというのが(ロシア側の調査だけでなく)オランダ外務省が出資する団体の調査でも明らかになっています。
 
 要するに今回の事態は、

・“キエフ総主教フィラレート聖下”は、教会法上合法な教会の地位を得たかった。ついでにいうと、ロシアをへこましたかった。
・ウクライナのポロシェンコ大統領が、次の選挙で負けそうなため「秘策」が欲しかった。ついでにいうと、ロシアをへこましたかった。
・そのため、(対ロシアのためと)うまくアメリカの政治家たちを丸め込んで、コンスタンティノープルの全地総主教庁に対してウクライナに独立正教会を設置するよう「説得」した。
・ただし、ウクライナの人々は独立正教会がどんなものかもわかっておらず、「政治的だ」などという批判以前に、純粋に無意味な可能性もある。
・キエフ総主教庁やその支持者は現在「ロシアざまぁ(笑)」と盛り上がっているという状況ですが、ヤヌコーヴィチ大統領が引きずりおろされた後、ロシアを中心に世界の混乱が深まったことを思い出させてくれます。世の中は優しい人が多いですが、これ以上の世界の混乱がまたもウクライナ発で起こることでウクライナ人になんの得があるのかさっぱりわかりません。
・ギリシャの正教会系メディアは、ウクライナの状況がほとんどわかっておらず、最近になってわかって慌てているようです。ウクライナの世論調査結果を見る限りバルソロメオス総主教の「ウクライナの人々が望んだ」は戯言であり、全地総主教庁下のカナダ・ウクライナ正教会の首座がポロシェンコ大統領を「聖ウラジーミル大公」「ヤロスラフ賢公」と並べて称える状況も彼らには理解不能でしょう。こんなバカバカしいことで東方正教会が分裂し、ギリシャ国内の信徒もアホらしくなって離れ、彼らが所属する組織の収入も減り、失業する可能性も上がる、ふざけるな、と肝も冷えているかもしれません。彼らが失業したら棄教するでしょう

 ……シスマではなく、質の低いコントを見せられている気もします。

 

 さて、ウクライナ・エストニアのほか、東方正教会内の「教会法上合法な教会」の間で以下のような管轄などに関する争いがあります。

 全地総主教庁とギリシャ正教会:
 ギリシャ国内にはコンスタンティノープルの全地総主教庁が管轄権を維持している地域が多数あり、それらはギリシャ正教会に「預けられている」ともいわれますが、実態としてコンスタンティノープルはギリシャ正教会側を尊重して動いておらず、ギリシャ正教会側の不満は高まっていることが報道からうかがわれます。
 しかし、おそらくギリシャ正教会は全地総主教庁に逆らえないでしょう

 エルサレム総主教庁とアンティオキア総主教庁:
 エルサレム側が一方的にカタールに大主教庁を設置したことにより、関係が断絶しています(当時、アンティオキアがエルサレムを“破門”と報道されました)。
 本来このような場合に調停をおこなうべき、コンスタンティノープルの全地総主教庁は、なにもできていません。
 そろそろ回復は無理だと判断され、シスマと呼ばれてもいいころ合いですが(もはや関係復帰がないと判断されるのがシスマ)、両教会ともロシア正教会との関係を重視しているためか、そうは呼ばれないことがほとんどです。とはいうものの、ロシア正教会にも調停は不可能でしょう。
 よって今回の分裂に伴い、完全に分断する可能性もあります。

 ロシア正教会とルーマニア正教会:
 モルドバ共和国に関する管轄権について、根本的には解決していないものの、当面のところ深刻な問題にはなっていません。
 今回の問題が飛び火する可能性も今のところないと思われます。
 キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下のモルドバ訪問日程が4日→2日に短縮(2018年10月)ルーマニア正教会がコンスタンティノープルの全地総主教庁に同調しモルドバの管轄権を両者で分割するとも
 情報が本当であれば一気にロシア正教会とルーマニア正教会のフル・コミュニオン解除となるでしょう。

 アメリカ正教会【OCA】:
 ロシア正教会が独立正教会として認め、他の数教会が追随していますが、コンスタンティノープルの全地総主教庁は独立正教会として承認していません。
 一方、同教会の聖職者に関しては「教会法上合法」であるという前提で対応しているため、細かく位置付けるのは難しいですが、全地総主教庁にとっては独立正教会ではないが独立して意思決定をおこなっている合法集団とでもいうべきものになっています(ロシア正教会は、自らの組織に所属したことがある聖職者についてはロシア正教会の一員とすることもありますが、最初からアメリカ正教会のみ所属している、あるいはほかの教会からアメリカ正教会に合流した聖職者については、ロシア正教会とは【同じ一つの教えを報じているものの】直接関係ないという立場にみえます。したがってアメリカ正教会をロシア正教会の一部としてみるのは現在では困難です)。
 コンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会の間が断絶になると、この教会の位置付けは微妙になりますが、一方、全地総主教庁系のフィンランド正教会とアメリカ正教会の交流は親密である、というよくわからない状況もあります。

 全地総主教庁管轄権下の自治正教会・フィンランド正教会:
 隣接しているため、問題が波及する可能性が上昇しているように思えます(コンスタンティノープルの全地総主教庁管轄権下の自治正教会フィンランド正教会が「ロシア正教会との対話の準備がある」。一方「全地総主教庁のやったことは正しく、ロシア正教会のやったことは一方的で悲しいことだ」(2018年10月)……対話する気はゼロ)。

 アトス山:
 教会とは分類しませんが、一般的に全地総主教庁下の管轄権にあるとされており、ロシア正教会が全地総主教庁とのフル・コミュニオンを解除した現在、ロシア正教会の信徒は同地で領聖を受けることができないと(ロシア正教会は)発表しています。
 一方、アトス山側では、そもそも全地総主教庁の管轄権にあるというのは儀礼的なものであるという主張や、アトス山は独立正教会というものとは違う分類に存在する場所という主張もなされています。どちらもロシア正教会の信徒が同地で領聖可能とするものです。しかし全地総主教庁の管轄権下にない、あるいは独立正教会という分類にあてはまらないというのは、要はどういうことなのか、いまいち要領を得ないところです。

 

 その他、コミュニオンの関係により、「教会法上合法な教会」になりうる団体。

 マケドニア共和国(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 : FYROM):
 「教会法上合法でない教会」である「マケドニア正教会-オフリド大主教庁」が存在し、セルビア正教会下にある(「教会法上合法な教会」である)「正教オフリド大主教庁」と対立しています。
 一方、ブルガリア正教会は、「マケドニア正教会-オフリド大主教庁」を「教会法上合法な教会」と位置付けようとしています。
 コンスタンティノープルの全地総主教庁は、「マケドニア」に関連する名称を一切認めないが、これを使わなければ受け入れる(=セルビア正教会との関係の断絶も辞さない)意思を示しているため、「名前を変える」「いや変えない」「今までの立場を捨ててセルビア正教会系に合流」とフェイクニュース(?)が相次いでいますが、最新の報道によれば名称を維持するつもりのようです。であれば、コンスタンティノープルの全地総主教庁の承認による「教会法上合法な教会」となることは難しいです(追記:2018年10月17日:全地総主教は「名前を変えてもダメ」と回答したようです)。
 ブルガリア正教会が単独で独立正教会として承認したり、自らの管轄権下の自治正教会と認めることはできますが、その場合、コンスタンティノープルの全地総主教庁だけでなくセルビア正教会やロシア正教会を敵に回すことになり、マイナスが大きすぎるため、東方正教会の完全分裂が確定的にならない限り、そうはしないでしょう。

 モンテネグロ正教会:
 セルビア正教会から「独立」しましたが、セルビア正教会が承認しないのみならず、現在のトップであるモンテネグロ府主教ミハイロ座下がコンスタンティノープルの全地総主教庁から破門されているため、動きはほぼないでしょう。
 とはいえ、今回コンスタンティノープルの全地総主教庁が Anathema を解除したフィラレート聖下率いる「教会法上合法でない(とはもはや完全にはいえませんが)教会」キエフ総主教庁とモンテネグロ正教会はフル・コミュニオンの状態にあります(これがどうなるのかまだ不明)。全地総主教庁はセルビア正教会と争うことをためらうつもりはなさそうなため、一夜で手のひら返しがあるかもしれません。
 また、モンテネグロ(国家)の西側接近により、ミハイロ座下が(教皇就任前の)ローマ教皇フランシスコ聖下と一回あったことがあるだけしか根拠はありませんが(根拠というほどでもないですが)、東方正教会を完全に見限り、ローマ教皇とフル・コミュニオンの関係に入る可能性も超ほんの少しだけあるのではないかと思います。

 アブハジア正教会:
 ジョージア【グルジア】がアブハジア自治共和国の実行統治を失ったため、“アブハジア共和国”内で独自に活動している正教会です。ジョージア正教会【グルジア正教会】はもちろん認めていません。
 ロシア正教会とジョージア正教会の関係が断絶した場合、ロシア正教会下で地位を認められる可能性があります。

 トルコ正教会:
 キリスト教/トルコ正教会がコンスタンティノープルの全地総主教庁を提訴。ロシアとウクライナの戦争を誘発するような行動はローザンヌ条約違反=トルコの刑法に違反とのこと(2018年10月)まだ存在していたことに驚きましたが……
 ※この教会は変なところ(ずいぶんと前から一家族を中心に運営がおこなわれている)なので、他教会とコミュニオン状態に入ることはないでしょうが、トルコ大統領エルドアン閣下の気分次第で全地総主教庁から聖堂などを奪えるかもしれません。

 ベラルーシ独立正教会:
 正直あまり情報がありません。ベラルーシ国内でどの程度認知されているかもわかりません(主にアメリカで活動??)。
 今回、教会法上合法な地位を得そうなウクライナ独立正教会とフル・コミュニオンの関係にある、場合によってはウクライナ独立正教会によって設立されたとまでいわれる教会です。
 彼ら自身は自らも教会法上合法な立場となる、あるいは独立正教会となるだろうと主張しています。(コンスタンティノープルの全地総主教庁は彼らについてなにひとつ言及していませんが)
 ベラルーシ共和国にはロシア正教会系のベラルーシ正教会(全ベラルーシ総主教代理区)が設置されておりそちらが完全に主流です。ルカシェンコ政権とも近しいため、政権転覆でもない限り、変化が起こる可能性は低いと思われます。

 

 以上、いろいろ述べましたが、コンスタンティノープルの全地総主教庁の今回のおこない自体が「教会法上合法でない」と述べる各教会関係者もおり、「教会法上合法」「教会法上合法でない」というのは、もはや実効性が伴わない限りなんの意味もない屁理屈であるのが現実です。

 


 

 コンスタンティノープルの全地総主教庁が、ウクライナの管轄権を手放したことはないと発言したことにより、ロシア正教会モスクワ総主教庁との対立は引き返せないところまで来ました。

 西暦2018年、東方正教会は首位性を持っていたコンスタンティノープルの全地総主教庁と信徒数最大のロシア正教会の関係が破壊され、教会大分裂がおこりました

 いくつかの独立正教会が求めている問題解決のための汎・東方正教会の会合を、「全地総主教庁はその予定はない」と教会法上合法でない教会の主教が回答するという有様です。東方正教会とは……、「一つの教えを奉じている」とは……、教会法とは……なんだったのか
 もはや教会法上合法な教会など存在せず、政治的な派閥が存在するだけなのでしょう。

 この後、どのような経緯をたどって、「東方正教会は分裂した」という事実が認識されていくのかはわかりませんが、東西教会大分裂の経緯が参考になるでしょう。
 「自分たちが絶対なのだ」と主張し始めた勢力には、絶対的に従う離れるしかありません。

 

 

Spillover: